カ テ ゴ リ

『魅力ある人づくり』の根幹にある「総合人間教育」

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第3回夢・地球交響博 基調講演にて
CMF地球運動提唱者 木原秀成


21世紀をむかえ科学技術の進歩は予測しがたいものになりつつあります。 デジタル技術の進歩は情報通信世界を飛躍的に進歩させましたが、 その技術の基礎とするところは、アナログのように複合的放射状電波ではなく、単一電波です。 どちらの電波も必要だと思いますが、科学技術に限らず、 今後予測されるすべてのシステムがデジタル的になっていくでしょう。 テレビも地上デジタル放送が始まろうとしています。 携帯電話の機能はテレビ・デジカメ・音楽のプレーヤーなど多種にわたっており、 今後の進歩も期待されているようです。


世界的傾向であるグローバルスタンダードは、世界標準という意味です。 つまり、一つの統一したシステムで、すべてのものごとが構成され、それが起動力となり世界を動かすということです。 つまり、一点集中ということです。 一つのシステムでものごとが動きだすということは、他との比較ができなくなり片寄りが生じたり、 権力の集中や富の集中になりかねないのです。 この傾向は既に顕著になりつつあります。 このデジタル的無機的科学文明と、アナログ的有機的生命文明とが、 ますます相反しつつある現状を考える時、果たして人類は生き残れるのかと疑問が湧いてきますが、 哀しいかな、この回答は悲観的にならざるを得ません。 それは、世界的に人の心が崩壊しているような現象が起こっているからです。


日本でも、最近は毎日のように殺人事件があります。 少し前までは、路上で人が死んでいるというようなことは、聞きませんでした。 子供による恐喝などの犯罪。親殺し・子殺し。食肉の偽装行為。鬱病の増加・・・ 昨年のカリフォルニアの大火災も、大阪とほぼ同じ面積を消失したとされていますが、 一部は放火との報道もあります。 大人にせよ子供にせよ、万物の霊長としての人間という存在を、 今の人達に求めるのは極めて困難な状況になり、確実にその危機的エネルギーは拡大しつつあります。


なぜ人間の心が崩壊しようとしているのか

それを論じるためには、人間の生命体の仕組みと、この世に存在するすべてのものの仕組みとは何かを 理解する必要があります。


人間の生命は少なくとも、五つの生命体から成り立っており、 肉体だけではなく、心体・幽体・霊体・法体の5つの有機的融和体であるということです。 そして、肉体が滅しても幽体(霊魂)は不滅で輪廻転生する。 それゆえ、生前の生き方を大切にするという思想が生まれました。 だからこそ、昔の教育での「知育・徳育・体育」とか、文武両道というように、 IQ(知性)・EQ(感性)・SQ(霊性)の3つの側面からの生き方を大切にしてきたのです。


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また、この世に存在するものはほとんどのものが、目に見えるものと見えないものとで構成されているということです。 人間や動植物だけでなく、すべての物に命があります。 だからこそ日本人は、人間の供養だけでなく、魚や虫供養、針や包丁なども供養してきました。 それは、世に存在するものはほとんどのものが単なる物体ではなく、物のいのちと心のいのちが一体となったものであり、 その命の根源は同じ源から発しているという生命観を持っているからなのです。 だからこそ、物質的(金銭的)な価値と精神的(人間的)な価値のバランスを大切にしてきたのです。 また、人間の生命体も宇宙そのものを縮小した小宇宙であると捉えてきたのです。 物と心で全体なのです。


少なくともこの二つの重要な視点から捉えねばならないのに、 今までの世の中の失敗は物質的なものと見えるもの中心に偏ってしまい、 心的なものや見えないもの、また、神秘的なものをおろそかにしていたのです。


この現象は、明治以降の欧米文明流入と共に顕著になったのです。 もっと極論的な言い方をすれば、明治以降、知識人といわれる人たちは、 欧米の科学文明に心酔し東洋的精神性や宗教性を否定してしまったのです。 くれぐれも誤解していただきたくないのは、宗教ではなく「宗教性」です。 ここに世界的経済大国になりながらも、人間を育てるという教育においては、 極めて深刻な問題を今日起こした要因があります。 つまり、人間の生き方の中から目に見えない精神性や宗教性を失ったところに、 今日の本質的な欠陥があるのです。


「宗教性」とは、仏教・キリスト教・その他、主義主張(イズム)を持った宗教ではなく、 宇宙天地自然の摂理です。一言で言うならば「普遍性」であり、その本質は「生かし合う」ということです。
地球上に現れた最初の米の一粒は、人間が作り出したものではありません。 また、地球上の動物・植物・昆虫・鉱物・・・人間(個)も、宇宙・自然(場)から生み出されたものであり、 宇宙・自然(全体)から生み出された生命の命を頂いて(融和して)生かされています。 親子関係だけでなく、生きとし生けるものすべてが家族の関係にある。 また、家族だからこそ弱いものも悪いものも切り捨てない。 これが「宇宙森羅万象=生かし合い」の姿です。そして、それこそが「宗教性」なのです。


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人という字もお互い支え合っているように、日本人は、このことを茶道・華道・柔道・剣道・武士道・商道・・・・という 「道の文化」として大切に育ててきたのです。 欧米文明の中には、「相手を殺さずして勝つ」というような、武士道的な世界は決して見いだすことはできないのです。 そして、道の中心をなすものは、天の理・地の理・人の理。 つまり、『自然の秩序・社会の秩序・生命の秩序』の、 三つの秩序を調和させることが『道』ということなのです。


ただ一つの絶対神を中心にした宗教戦争は、今でも世界各地で続いています。 しかし、日本は八百万の神であり、自然界に存在するすべてのものの中に、 尊い生命が宿っているということを察知していたのです。 すべてを包み込み融和させていきながら、それぞれの特徴も生かすという、 宇宙森羅万象そのものの仕組みを、宗教性として育んできたのです。 だからこそ、自然界に存在するもの、あるいは人間までをも八百万神として祀って大切にしたのです。 そして今もって尚、すべての日本人の中には縄文時代のアニミズム的(すべてのものに生命が宿っている)なものが 深層意識の中には宿っているのです。


日本人は無宗教とか宗教的民族ではないと言われる人もいらっしゃいますが、 日本人こそ宗教的民族であり、それが生活の中に自然に生かされていたからこそ、気づいていないだけなのです。 そうでなければ、良きにつけ、悪しきにつけ神社・仏閣にお参りしたりする筈がないのです。


日本文明・文化の中にある精神性とは

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日本人の精神土壌には、すべてのものに生命が宿っているというアニミズム的なものに 古神道・仏教・儒教・道教等が融和されて、日本独自の精神土壌が形成されていったのです。 日本人は水や火や古木や岩等々、いろいろなものにその生命を見い出し、 それらを時としては神として尊厳性を与えて祀っていたのです。 また、針供養・包丁供養等をして、魚や生命なき裁縫針にまで感謝したのです。 古神道は正にアニミズム的なものだったのです。


そして、見落としてならないことは、尊厳性の裏には「恐れ」や「穢(けが)れ」の思想があったのです。 水や火は人々が生活をしていく上で、絶対的必要な生産力を持っていますが、 時として火事や洪水を起こしていく恐怖感を与える破壊力も内在しています。 だからこそ、大切にしなければいけないのです。 穢してはいけない、ということになったのです。


このような恐れや穢れの思想は、人間の行動に抑制力を与えることの効果もあるのです。 この「抑制力」はとても大切なことであり、人間の動物的・野性的心理をコントロールすることにつながっているのです。 人間に怖いものが失われていく、つまり人間が一番というような人間至上主義・科学至上主義が、 自然環境の破壊や公害を生みだし、人間の精神性の破壊まで起こしているのです。 怖いものや穢してはいけないものを人間の生き方の中に大切にしていく、 これも日本人が大切にしてきた宗教性なのです。 このような思想は「安全」という思想を生みだし、世界一といわれる治安のよい国をつくりだしたともいえるのです。


この宗教性を失ったところに、日本の精神土壌の崩壊があり、 今日の社会の混乱と心の崩壊の本質的問題があるのです。 今こそ人間が人間としての精神性を取り戻し、 安全で物と心の融和した豊かな社会を取り戻さなければなりません。


『魅力ある人づくり構想』の根幹にあるもの

そのために必要なことがあります。 それをまとめて体系化したものが『CMF総合人間教育』です。


人は、日々の生活の中で様々な選択をする時に、眼・耳・鼻・舌・身、そしてまとめとしての意(識)の六感を使います。 決して頭だけを使って選択してはいないのです。 音楽や絵画等芸術性の中には、この六感を磨くものがたくさんあります。 それと「身と口と意(=心)」の三つの働きを通じて、人間は生きています。 この「身と口と意(=心)」の働きを通じて六感を磨き、陰陽四つの側面から、 八つの生命づくりと八つの生活づくりをすることこそ、教育の理想であり総合人間教育なのです。


『魅力ある人づくり構想』の根幹にある総合人間教育とは、 先にも述べた人間を五つの生命体の有機的融和体としてとらえ、 陰陽四つの側面、つまり「生命づくり」の側面と「生活づくり」の側面の両側面から、 宇宙森羅万象にそって六感の教育をするということなのです。


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