自民党大敗の根源的な原因は保守本質の座標軸が大きくぶれたことにある
この度の第45回衆議院議員選挙は、天下分け目の決戦を制し、大方の予想どおり民主党が大勝した。祝福と共に大いなる期待と不安が交錯している。
世の論客達の分析はそれはそれとして、小生は、自民党の大敗は「保守本質」の座標軸が大きくぶれたところに根源的な原因があると思う。
その震源は根深く、93年の新進党に始まり前回の小泉首相のもとでの衆議院選の大勝にあった。「自民党をぶっ壊す」と言っていたが、その通りになり、それどころか、日本文明・文化の伝統である「保革のバランス」をも壊してしまったのである。
それが、2年前の参議院選の敗北につながり、そして、この度の決定的な大敗につながってしまった。このことに気づいている人はほとんどいないのではなかろうか。
明治維新からその踏み絵が始まった
徳川300年の歴史をぶっ壊したのが明治維新だ。
「脱亜入欧」のもと、富国強兵策とも相まって、欧米文明を物真似し、縄文時代から先人達が永い時間をかけて育んできた歴史や伝統をことごとく破壊してきた。
「過去にこだわっていたら、いつまで経っても前に進めない」この革新思想で、過去をばっさり切り捨てて新しい物を築いてきたのである。「革新思想」は着せ替えの支配型で、過去は顧みないという危険性・暴走性があり、時としては、未来に遺恨を残しかねない。これこそが欧米文明である。
わかりやすく表現するなら、「義理人情」が「保守」であり、「理屈理論」が「革新」である。現代は社会秩序や人間関係にとって大切な義理人情がすたれ、理屈理論のマニフェスト社会になりつつある。
日本文明・文化への回帰と再生
もちろん、どちらも大切で車の両輪だが、T(時)P(場所)O(機会)に即して臨機応変に、「先人の智慧を尊重し、更にそれを乗り越える発想を生み出す」保守の思想こそ、人間の基本であり、だからこそ歴史や伝統を大切にすべきではなかろうか。
世の中、理屈理論では割り切れないものがほとんどだ。近頃マニュアル人間の欠点が指摘されているが、民主党を大勝へ導いた「マニフェスト」の不安がそこに潜んでいる。
なぜなら、時代は秒進秒歩で激変しているからだ。
日本は、十二単衣の共生型文明で、別名ムスヒ文明と言っている。古いものに新しいものを重ねて、新しいものを作る温故知新の文明であり、これこそが「保守」の本質で、だからこそ自民党は日本文明・文化への回帰と再生をするべきである。
祀祭政一致の国づくり人づくり
日本は「伝統の破壊こそは正義」のもと、唯物論哲学・科学 に基づく欧米の着せ替えの支配型革新思想で、明治維新を成功させ、また、第二次世界大戦の敗戦による占領政策によってますます革新化し、高度な物質文明を築きあげてきたのだが、今、亡国の危機にある。
自民党は戦後半世紀、保守思想のもと革新思想との政権戦争を勝ち抜いてきたが、党そのものが保守本質から大きくぶれたため、国民の信頼を失ったのが、この度の歴史的大敗である。
今こそ、当財団が推進している日本国の根源に流れるムスヒ文明・文化に基づき、聖徳太子が日本の礎を創った「祀祭政一致(機関誌2009年神無月号vol4 16頁~参照)」の国づくり人づくりを目指していただきたい。
それこそが、保守本質の座標軸のぶれを元に戻すことになり、自民党が再度国民の信頼を取り戻す唯一の道であると信じる。