現代社会の実態
産業革命以来、グローバルスタンダードに代表されるように、欧米型経済システムが世界的に主流となって、現在の物質文明を発展させてきました。
しかし、利潤の追求だけを優先させた結果、深刻な環境問題は各国の利害もあいまって、解決策を見いだせないまま人類(万類)の生命を脅かしており、欧米型経済システムの中心であり世界をリードしているアメリカから起こった金融危機は、各国に大きな影響を及ぼしました。
本来は、貧しい国あるいは遅れている国、進んでいる国あるいは栄えている国、経済格差や地域格差・国家間格差があるものを、平準化してバランスをとっていこうとする考え方が、グローバルスタンダードの本質だと思います。
しかし、今のグローバルスタンダードは、「正しいものが勝つのではなく、勝ったものが正義」的なものがまかり通り、一人の勝者と残りはすべて敗者となる極端な二極化の時代になる心配があります。
日本においても、明治以降、欧米文明・文化を積極的に導入し、欧米型経済学・経営学のもと世界でも稀にみる近代化に成功し、第二次世界大戦の敗け戦にも屈せず、奇跡的に復活し経済大国になったものの、その中心を支えてきた日本企業の未来はほんとうにあるのかと疑いたくなるような近年の不祥事の数々。
いつの時代も、不祥事はあるのですが、企業家として社会的責任を負わなければならない重要な立場にありながら、倫理観や道徳観など、その内容が極めてお粗末に感じられはしないでしょうか?
また、地方を合わせれば1千兆円を超えるといわれる債務が年々増加しており、まさに日本国そのものが倒産寸前であるといえます。政府は有効な策を打ち出せず、また日本経済の活性化は国際的な問題でもあるのです。
人類7百万年の進化の歴史の中で、今ほど環境や生命が危機に瀕している時代はないのです。
資本主義そのものが危機的状況にある
経済を動かしているのは『人』です。そして世界を動かしている欧米型経済システムを作ったのも『人』に他なりません。
「経済」の語源である「経世済民」とは「世の中を治め人民の苦しみを救うこと(広辞苑)」という意味ですが、世の中を治めているのは政治であり、政治と経済は密接な関係にあるといえます。そして経済の流れを作っているのは企業なのです。
近年の政治家の汚職やそこにかかわる違法企業も、本来経済が目指す「経世済民」を歪めているのではないでしょうか。
また、利益を上げている優秀な企業の影では、その下請けが生活もままならないような現実があるという例もあります。これでは優良企業とは名ばかりで、法に裁かれることはないかもしれませんが、経済の定義からすれば、犯罪とも言える行為かもしれません。
規模が大きくなければ生き残れないという大企業同士の合併は、結果として多くの従業員の解雇、またリストラが正当化され、さらに大企業を支えるネットワーク状に広がる中小零細企業や、個人経営者にまでその影響は広がり、大きなところだけが潤い、そのお金は小さいところには回ってこない仕組みが暗黙に作られています。この度の世界金融危機では、契約社員の解雇や契約期限の満了による大量の失業者や、新入社員の内定取り消しなどを生みだしています。
給付金や大規模な景気刺激策も、一時的なものであれば、最終的には大きなところにお金が集まる仕組みの中では、当然小さい所にお金が回ってこないのです。これでは社会全体が良くなるはずはありません。
産業も企業も、人間が幸せを求めて生活を良くするために発展していったのです。しかし、今の世の中の仕組みは、会社(経済)を生かすために人間が犠牲になっているのです。
そして、金融危機の本質は、単純な100年に一度の危機的状況ということではありません。1760年に始まった産業革命以降、自由競争から生じた資本主義は、約300年間お金を中心に続いてきました。金融危機は、この資本主義そのものの終焉が来ているという現象と捉えることができるのです。つまり300年に一度の危機なのです。
格差から貧困の拡大へ
失われた10年といわれたように、バブルの崩壊以降も、経済の閉塞感は続いています。格差社会という概念はすっかり定着していますが、図(1)「フリーターの描けない未来予想図」を見てください。正社員とパートでは生涯賃金に5倍もの差があり、その格差は1億5千万以上という調査結果が出ています。
また、非正社員・非正職員の年収は200万円台、パート労働者の年収は100万円台です。特に20代30代の方々がこの年収のまま、40代50代を迎えると、社会全体が格差どころではなく、貧困社会になりかねないのです。
日本は第二次世界大戦後、焼け野原から奇跡の復活と世界が認めるほどの高度成長をしてきました。物もお金もない時代からの復活に比べれば、出発した地点が全く違うにもかかわらず、なぜ日本はバブル崩壊以降10年以上の年月を経て、この事態を打開できずにいるのでしょうか?