連載(2)八百万神(人)々の結集 現代社会12の不安(2)


4 家庭の不安

このことは、戦後の日本の家庭に特に目立ってきた現象です。とにかく人間関係の様相がすっかり変わりました。戦前までは倫理・道徳が大切にされ、道の文化といわれる位、茶道・華道・剣道・柔道・商道、それぞれの分野で自己完成の道が説かれ、また、一方では『恩』という心あたたまる情操が、人と人との間柄を結ぶ、自ずからなる徳として培われてきましたが、戦後、権利と義務というものに置き換えられて、親子の断絶を生み、親と子は別居するのが当たり前になり、年老いてくる親に不安と淋しさがつきまとっているのです。


夫婦関係にしても、夫婦生活の真の意味も知らず、恋愛感情によって結婚してみたが、夢や理想が崩れると簡単に離婚してしまう。「成田離婚」なる流行語まで生んでしまっています。また、家庭とは名ばかりで、朝から晩まで通勤・仕事に追われ、夫婦・親子の団らん等夢物語になりつつあります。


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家族と一緒に食事をするのは月に限られるほどしかなく、子供とは寝顔で対面するのがほとんどで、子供のことは妻に任せっぱなし。そんな生活だから、子供との絆も薄くなり、中年に近づくにつれて、家族の中の孤独を感じるようになり、自分の人生について・子供について・社会のゆく末について真剣に考えはじめたら、不安でいっぱいになる。


家庭の中が、親は親で忙しく、子供は子供で、宿題や試験に追われ、自然の中を友達とかけまわったり、遊んだり、冒険を楽しんだりする余裕もなく、学校の管理と受験戦争にあえいでいます。 家族がバラバラに引き離され、家庭の本当の味を奪い去ってしまっているのです。


5 生命の不安

昔は、野菜は腐っても人間は腐りませんでしたが、現代は、野菜は腐らなくなりましたが、人間が腐ってしまう。農薬による人体に対する悪影響・防腐剤・添加物・加工食品による繊維素の不足・ハウス栽培・冷凍食品による栄養価の低下・肉食による諸病の増加・野菜食の不足による子供たちの病気・カルシウム不足によるイライラ、私たちの身のまわりは物質的に豊かになっていても、生命をおびやかされることが蔓延しています。


日本の自然を生かした木造建築は少なくなり、コンクリート住宅が増えたために、室内の湿気の吸収率からくるカビや、風通しの悪さが重なって家ダニの増加、また、加工新建材から微妙に出ている放射性物質等々。職場においても効率主義の犠牲から、組織の部分となってしまったことから起こるストレスが、ノイローゼや精神病の増加を起こしています。


時間に追いまくられて、自分を取り戻す暇がなく、健康管理の不足から現代医学の最高技術ですら治せない難病が続出しています。また、成人病は大人だけの病気ではなく子供にまで浸透し、肩コリや高血圧等の症状が小さな子供にまで起こっています。母親の安易な飲酒や喫煙や性生活の乱れからくる奇形児出産の増加。世界中で猛威をふるっているエイズの増加。世界一の長寿国になりながら、現代ほど生命の不安な時代はないのです。


何ものにもまして大切な 『生命』という財産のいかに価値の低いことか。若いからといって安心できない我が命。決して他人事と思えなくなっています。  特に環境ホルモンの問題は、深刻な問題になりつつあります。


6 経済の不安

日本経済は今極度の不況に突入し、失業率は戦後最高になっており、また勝者は正義という市場経済主義を中心とした、世界的大競争時代に突入し、勝者と負者が二極化して、ますます貧富の差が広がりつつあり、国際的経済摩擦も増えつつあります。


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そんな状況にあっても、多くの人々には不況感はあまり感じられず、世界の一流品といわれるブランド商品を普通のように身につけている。毎日の贅沢な食事と残飯の山。粗大ゴミ捨て場の家具や電化製品。そんな日常生活を見ますと、金持ちの国のような気がしますが、ひとたび病気にでもなれば早速生活に困るし、地価の高騰は住宅取得をますます困難なものにしています。


貧富の少ない理想的経済システムを築きあげた一億総中流社会は、徐々に崩壊しつつあります。欧米諸国から「ウサギ小屋に住んでいる」という悪口をたたかれる日本の大半の人たちの生活は、実質的には、決して経済的に安定しているとは思えません。


むしろ『文化的生活』という言葉に惑わされて、生活水準は中流でも将来の保証という内容になると、はなはだ不安なのです。一万円札の使いでのないこと。安易に買い、安易に捨てる。若者たちを含め『自己破産』の急激な増加、クレジットやローンの便利さが、物を大切に扱う心や、辛抱する心を奪い去ってしまいました。財布の中にカードの数が増えれば増えるほど、借金も増えていきます。夫婦共稼ぎをして、自分の命をすり減らして必死に働いても、なぜかお金が足りない不安にかられる現代社会になっているのです。


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