現代人の宇宙観・人間観
現代人の宇宙観は唯物主義、人間観は個我実有主義の傾向が強くなっています。特に、この傾向は欧米文明を取り入れた明治維新以降顕著になりました。その結果、現代は様々な不安や行き詰まりが生じていると言っても過言ではありません。最近の企業の不祥事も、このことと決して無縁ではないのです。
唯物主義の宇宙観とは、宇宙の全てのものは物質でできているという物質主義中心の考え方であり、起こりうる全ての物事は、それを生かすためにあるに過ぎないと見ています。又、人間観や生命観についても物質的に捉え、その個体を維持する為に発生した、物欲本能の働きが生命そのものであり、それを自ら守るために個我意識を起こします。従って、肉体の中に自我があるという個我実有―つまり人間中心の考えです。
このような現代の唯物主義・個我実有の考え方は、いつ頃から唱えられるようになったのでしょうか。どの時代にも、こうした考え方の人々はいたのですが、根本的には東洋文明と欧米文明の違いを理解しなければなりません。簡単に説明すると、東の東洋は精神的であり、西の欧米は物質的であるということです。 そして、欧米文明の発達が、今日の社会を作りあげたと言えるのです。
人類の歴史に見る社会情勢の変化
『人類の歴史に見る社会情勢の変化』という視点から説明してみましょう。図(1)は、アメリカの未来学者、アルヴィン・トフラー氏の著書『第三の波』を参考にし、私の視点を加えて、社会の変化を理解していただく為に大雑把にまとめたものです。ここに見るように人類の歴史は、農猟社会→産業社会→情報社会と移行して、今は宇宙社会へと向かいつつあるのです。
まず、農猟社会では人々は自然に取り囲まれての生活でした。しかし、ヒマラヤ山脈を境として、西の文明と東の文明に差が出てきたのです。西の文明は、別名砂漠の文明と言われるくらい、天地自然の恵みが少なく緑も少ないため、人々は自然を開拓せざるを得なく生活の糧である食料もついつい動物的なものを求めて、各地を狩猟していくようになり遊牧民族となったのです。
逆に、東の文明は森の文明とも緑の文明とも言われるくらい天地自然の恵みが豊富だった為、自然を征服する必要もなく、自然に順応していれば生活ができました。したがって、その土地に住みつくようになり農耕民族となってしまったのです。その結果、西の文明と言われる欧米文明は自然を征服するという思想が生まれ、物質中心の唯物的社会となり、逆に東の文明と言われる東洋文明は、自然に順応するという思想が生まれ、精神中心の唯心的社会となったのです。
このような東西の文明の差を基盤にして、人類は大きな変化を遂げていくのです。そして、この文明の差を無視しては、21世紀のあるべき理想の社会は描けないのです。しかしながら農猟社会は、東の農耕的社会であろうと西の狩猟的社会であろうと、人々の生活は自然との関わり合いの中にあり、別な言い方をするなら、緑の木々や動物や魚との共存の中にあったのです。ですから、自ずと生命の尊厳とか、心のふれあいとか、助け合いだとかいうものを大切にしてきました。しかし、その根底には、欧米は物質中心であり、東洋は精神中心的なものが秘められていたのです。
この東西の文明の差がやがて、それ以後の人類の歴史に大きな影響をもたらしていくことになるのです。そして、その大きな影響は第2の社会といわれる産業を中心として社会に現れてきます。