WHOの健康の定義には精神的な健全も
WHO(国連の世界保健機構)の保健大憲章の中には、
「健康とは、肉体的、精神的、並びに社会的に健全に良好な存在状態(Well・Being)であって、
単に病気や虚弱がないということだけにはとどまらない」
と健康が定義づけられている。
最近、医療の現場では、肉体的・唯物的・対症的な西洋医学では対応できない数多くの疾病が増えてきた。 新しい医学として、体を全体的に捉える東洋医学が脚光を浴びつつあるのもこうした理由による。 新しい医療への変化を考える時、今一度、WHO保健大憲章の視点に立って、 「生命活動を支える3つのシステム」を再確認し、 前号で述べた霊性と健康に踏み込む必要がある。
生命活動を支える3つのシステム
私たちの生命活動を支える3つのシステムがよく知られている(図1)。 最近脚光を浴びている「免疫療法」との関連性が大いにある「神経系」について述べよう。 その中でも、健康に大きな影響を持っている自律神経系は、 ご存じのとおり、交感神経と副交感神経の2つに分かれる(図2)。
交感神経は、ストレスや激しい感情に影響を受けるので「興奮の神経」とも呼ばれる。 それに対して、副交感神経は楽しいことやおだやかな心の状態に影響されるので、「リラックスの神経」とも呼ばれる。
2つの神経の働きの違いを心臓を例にとって説明すると、ストレスを受け興奮の神経(交感神経)が働きだすと、 心臓は速く強い振動をして血流を全身に流し、身体をストレスに耐えられるように調整する。 あまり促進すると血圧があがり血管障害を起こす。 そうすると、抵抗するリラックスの神経(副交感神経)が働き、心臓の働きを緩和させ、身体を正常に戻そうとする。
このように、交感神経と副交感神経はお互いに牽制して、 私たちの意志とは無関係に身体を自動的に調整してバランスをとり、 体を正常に保とうとしているのである。
交感・副交感神経のバランスがとれた状態が健康
言い換えれば、交感神経と副交感神経のバランスが取れている状態が健康状態で、ストレスによって自律神経のバランスが崩れることが病気の大きな原因の一つだ。
このストレスは、3つに分けられる。
(1) 肉体的ストレス |
過労や重労働・激しいスポーツのあと、背骨の歪み・姿勢・不自然な呼吸・運動不足など |
(2) 生活的(社会的)ストレス |
IT機器の氾濫・冷暖房からくる抵抗力の低下、日光照射時間の減少、大気汚染、騒音、水質汚濁、化学合成物の氾濫、加工食品の増加など |
(3) 精神的ストレス |
イライラ、クヨクヨ、ガミガミ、メソメソ、ビクビク、ヒステリーなど。 |
特に精神的ストレスは、自律神経系と内分泌系に大きな影響を与える。もちろん、その結果、代謝系もバランスが崩れ、免疫力も低下させてしまう。
次号で霊性とストレス、免疫力の関連に迫る。